君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
「神楽弥。
この辺り、夜になると狼が出るから気をつけて」

こそっと耳打ちされる。
カナトに聞かれないようにしたんだろうけど、カナトはピクリと反応する。

「シン、もう寝たらどうだ」

そう言ってシンの背中を押すと、部屋から閉め出した。

静まり返る部屋。

何を話そうか。
今まで二人になることは結構あった。

でも、カナトの部屋っていう空間に緊張が高まる。

たぶん、カナトも同じなんだと思う。

「ね、ねぇ。
シンとはいつから一緒にいるの?」

高まりきった緊張を少しでも解したくて、何気ない質問をしてみた。

「そうだな。
物心ついた頃にはもう一緒にいた。

シンは幼い頃から剣が得意でな。今まで一度も勝ったことがない」

「そんなに強いの?」

「あぁ。
シンには幾度となく助けられてきた。
無茶をするなって時々叱られるよ。

ふざけたことをよく言ってるけど、いつも絶対的な味方でいてくれるんだ」
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