鈴川 飛鳥side
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「あら、飛鳥もう行くの?今日は月曜日でしょう」







玄関でローファーを履くおれの背中に母さんの声が届く。




おれは爪先を二度、地面に軽く叩きつけて振り向いた。






「課題、学校に忘れてきた」






苦笑いのおれに、洗濯物を抱えていた母さんは困ったように溜息をついた。







「本当にどっか抜けてるんだから。慌てて事故に遭わなように気をつけてね」







うん、と首を縦に振り、肩から滑り落ちたスクールバックを再度定位置に戻す。






玄関の扉に手をかけた時に突拍子もなく、けれどずっと「言おう言おう」と思っていたことが頭の中に噴出する。







おれは慌ててもう一度振り向いて、洗面所のある部屋に入る途中の背中に今度はおれが言葉を飛ばす。







「母さん、おれ、3年になったら塾通ってもいい?」







振り向いたその顔はおれを応援してくれる優しい母親の顔だ。








「お母さんはもちろん構わないよ。出張から帰ってきたらお父さんにも話して、それから通う先、考えようね」


「うん、ありがとう。じゃ、いってきます」








「いってらっしゃい」の声に背中を押され、おれは学校へと向かった。