冷血部長のとろ甘な愛情
困らせるため
「神原さん。お忙しいところ申し訳ありませんが、チェックお願いできますか?」

「うん、これ終わったら見るね」

「はい、よろしくお願いします」


丁寧な口調で文書を五枚渡してきたのは、二年後輩の坂本真吾(さかもとしんご)くん。彼の勤務態度は真面目すぎるほど真面目。

言葉遣いも丁寧だし、業務も一つ一つ丁寧にこなし、ミスがほとんどない。だから、わざわざ確認するまでもないけど、万が一があっては困るのでちゃんと確認はしている。

資料作成が区切りのよいところで保存し、両手をあげて伸びてから首を回す。ずっとパソコンに向かっていると肩が凝ってしまう。

軽くほぐしてから、坂本くんの文書に目を通す。ふと彼のデスクに目を向けるとそこにはいなかった。

今日も完璧。『OKです』と書いた付箋を貼り、主のいないデスクに置く。

コーヒー飲もうかな。


「神原さーん」


空にカップを持って立ち上がると課長に手招きされる。行くしかないか……。カップをデスクに置く。

課長は部長のデスクで話をしていた。話の途中で呼ばれるとは嫌な予感しかしない。展示会のことだろう。重い足取りで二人のもとへ行く。
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