つぎの春には…

〜涙〜




それから1年と少し経った日


暖かい春の日曜日に栞と2人で出かけた



俺のとっておきの場所


大学の頃に見つけた川沿いの桜並木



川が小さく、車道もなく歩道しかないからあまり人に知られていない


桜は満開だというのに通行人もほとんどいない


手を繋ぎ桜並木の下を歩く



「こんなところあったのね」


栞も上を見ながら呟く


「花見の宴会とかやれる程の広さもないからそんなに知られてないみたい」


静かな川辺に流れる水の音と2人の足音が響く






「ここ」


俺が足を止めて向きを変えると栞もそれに倣う



「すごい…」


栞の口から感嘆の言葉が漏れる


そこは桜並木が川のカーブに沿っていることによって、視界が満開の桜によって埋められる


俺だけの秘密の位置


今日からは栞と共有







「栞」


しばらく桜に魅入っていた栞に声をかける



こちらを振り返り、首を傾げる






「来年も、再来年も…その先もずっと…桜の季節にはここへ来よう。
栞と栞の大切な子ども達を俺の一生をかけて守らせてほしい。」



栞の瞳から溢れ出す涙



「俺と結婚してくれないか?」


ポケットから指輪の入った箱を取り出し二つ折りの箱の蓋を開け栞に差し出す



大粒の涙をその綺麗な瞳からポロポロと流しながら「はい」と指輪の箱を受け取る栞をギュッと抱き締める



この小さな体で1人で背負って耐えてきたものを俺にも分けて


一生をかけて幸せにする





手を繋ぎ再び桜並木を歩く


愛しい子ども達の待つ家へ


強く握り締めた栞の薬指に光る約束の指輪




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