エリート上司の過保護な独占愛
第四章 愛される近道は、自分磨きがおすすめです
「それ、おいしそうね」

 午後のランチタイム。ミーティングルームのテーブルでは数人の女子社員たちが食事をとっているなか、絵美が沙衣の赤いお弁当箱の中身を覗き込んだ。そんな彼女が手に持っているのはコンビニのおにぎりだ。

「よかったら、おひとつどうぞ」

 これといって手の込んだ弁当ではない。ゆかりのおにぎりに甘い卵焼き、それと生姜焼き。ちくわにキュウリを詰めたものに、ミニトマト。どうしても隙間がうまらず、冷凍食品の小さなハンバーグも入っている。

「いいの!? じゃあこれ、いただきます」

 そう言って絵美は卵焼きを口に運んだ。

「ん~」

 おいしそうに頬をおさえて、もぐもぐと咀嚼していたかと思うと「もう一個」と手を伸ばし、次はちくわをパクンと口の中にほおりこんだ。

「あ~おいしい。お礼にこのマドレーヌあげる。デザートに食べなさい」

「ありがとうございます」

 マドレーヌを受け取ると、沙衣はゆかりのおにぎりを食べ始めた。その姿を絵美はしっかりとみている。

「そんなに見られると、食べづらいんですけど」

「そうよね、ごめん。あ~なんだって、食堂が工事なんてするのよ。私このままじゃ飢え死にしちゃう」

 絵美はコンビニの袋から二つ目のおにぎりを取り出し一口かじると、カップの味噌汁をすすった。

「飢え死にって、大袈裟な」

 笑う沙衣に絵美は目を見開いて、声をあげた。
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