御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
どうしても知りたくなかった。

たまたま乗った沿線上に、自宅があったというのもあるし、なにより鳥飼にシンパシーのようなものを感じていたのかもしれない。
なんとなく、おせっかいとわかっていても、声を掛けずにはいられなかったのだ。



マンションのドアを開けて、鳥飼を招き入れた。

「どうぞ」
「ここで待つよ」

早穂子の誘いにうなずきつつも、部屋に上がるつもりはないようだ。
玄関の中で立ち止まる。

「中で待ってたら? お茶くらい出すけど……」

早穂子がそういうと、鳥飼が少し困ったように笑った。

「そういうことは言わないほうがいい」
「え?」
「俺も一応男だから」

鳥飼はやんわりと微笑んで、眼鏡の奥の目を細める。

『男だから』

その言葉に、隙を突かれた気がして、早穂子の頬はカーッと赤く染まった。
頬だけではない。耳や首まで熱くなる。

「あ……そっか」
< 200 / 276 >

この作品をシェア

pagetop