御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
恋、しませんか。

それから間もなくして――始はギリシャへと旅立った。

一時的な出張ではなく、観光大国ギリシャで新規事業を立ち上げるためだ。

日本に戻ってくるのは数年先という一大プロジェクトだが、本来始ではなく、別の取締役が本部長として出向する予定だったと噂を聞いて、早穂子の胸はざわついた。

だが「寂しいよね~」という同僚たちの声にも、「そうですね」と、一社員としてうなずき、ゆずの「よかったの?」と気遣う言葉には、「自分で選んだことだから」と応えた。

正直、その話を聞いた時は、ホッとしたのだ。

自分で決断したとはいえ、完全に割り切れているわけではない。

だが始が目の前にいなければ、少しずつ早穂子の中で彼への思いは小さくなってしまうのだろう。
そしていつか、すべてが『いい思い出』になる――。

(そうよ、大丈夫……。いつか吹っ切れるわ……)

時がすべてを解決してくれるはずと、早穂子は信じるしかなかった。

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