「はあ‥‥」

私は、入学以来何百度目かになるため息をついた。

ここは私の学び舎たる、K大学のキャンパス。
一年間、脇目も振らず勉強して合格した、第一志望の大学だ。
しかし、これからのキャンパスライフに胸躍らせて校門をくぐった4月、私は早くも世間との格差を思い知らされて、愕然となったのだった。

それはーー。

「お待たせー」

その明るい呼びかけに、自分にかけられたわけでもないのに、百合絵がギクリとして振り向くと、ガーリースタイルに身を包んだ女子大生が、階段を駆け下りてきて、百合絵の前を歩いていた爽やか系男子に腕を絡みつかせた。男子の方も満更でもない様子で、
「なんだよ、遅いじゃん」
などと言って、その子の頭を小突いたりしている。
「ごめんごめん、講義が長引いてさー。あの先生、話面白くないのに、無駄に長いんだよねー。あーあ、学食もうゲキ混みじゃーん」
二人はじゃれ合いながら、学食の方に歩み去っていった。

百合絵はそれを盗み見ながら、この日二度目のため息をついた。

(あーあ)

自分も学食でお昼を食べようと思っていたが、もはや向かう気にならず、食欲も失せたので、百合絵は踵を返した。
ひとりトボトボと校舎の裏側へ向かう。