こじらせ女子が本気になったら
(私にもあんなことする日が来るのかなあ‥‥)

百合絵は決してモテない方ではない。
むしろ告白されたり、ナンパされたりすることは多い。
ただ‥‥。

「す、角さん」

(え?)

急に呼び止められた百合絵が驚いて振り向いた先に、見慣れた光景があった。
ちょっと気の弱そうな、それでいてどこか押し付けがましい視線をこちらに向けている、お世辞にもカッコいいとは言えない二流男子‥‥。

次の展開は容易に想像できたが、百合絵は仕方なく返事をした。

「はい、何でしょうか‥‥?」

その気弱そうな男子は、もじもじしながらちらりと上目遣いをすると、
「あ、あの、俺、じゃなかった、僕、角さんと語学で同じクラスの、〇〇と言います‥‥」
「はあ」
 
内心、知らないと思いつつ、百合絵が再度うなずくと、何に勢いづいたのか、気弱男子は急に百合絵に詰め寄ってきた。
「僕、教室で角さんを見かけてから、いいなと思ってて‥‥。 今、付き合ってる人とかいますか?」
「いませんけど‥‥」
詰め寄られた分、百合絵が後ずさると、気弱男子は空けられた分、また詰め寄ってきて、
「だったら、僕とお付き合いしてくれないですか? 自分で言うのもなんだけど、俺、結構優しいと思うし、角さんを大事にする自信あります!」
と、熱に浮かされたような目で見つめてくる。

(うわあ‥‥)
 
百合絵は内心うんざりしながら、またこのパターンかと悲しくなってきた。
 
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