ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
1: 偽りの世界

「なあ、羽柴って俺の名前知ってる?」

それはなんの前触れもない唐突な質問だった。

時計の針は12時45分の2分前。

校内は昼休みでバタバタと騒がしくて、食堂に向かう生徒たちや廊下で大騒ぎする男子たち。お弁当や各自で用意した昼食を食べながら自由な時間を過ごしているこの時に、なぜか私は放送室にいる。

「………」

密室された空間。

ここだけ別世界のように外の音がしなくて、私は野菜ジュースをストローですすりながらマイクの前に座るクラスメイトの背中を見つめていた。

一瞬、空調が聞こえるほど静かになって。カチッと校内放送のスイッチが入ると、そこにいるはずの男子の声が壁に取りつけられたスピーカーから聞こえた。


『皆さんこんにちは。水曜日のなんでも相談コーナーの時間です』
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