こじらせカップルに愛の手を
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「俺達って……シたよな?」

土曜日の朝、ベッドで私を見つめる彼は、佐伯郁斗(さえきいくと)29歳。
大手文具メーカー『オリオン』の営業第一部で、チームリーダーを務める私の同期。仕事もルックスも完璧で、社内の抱かれたい男No.1。

一方、私の名は加藤美海(かとうみう)29歳。
同じく営業第一部のサブリーダー。
負けず嫌いの性格で、同期の佐伯とは犬猿の仲だった…はず。

「ま、まあ。昨日はお酒も入ってたしね。じ、事故ってことで…いいんじゃない……かな」

私はそう言って、ぎこちなく笑った。

だって、気まず過ぎる。
こんなつもりじゃなかったのに…。


***

ことの発端は昨夜の同期会の帰りだった。
駅でタクシーを待っていた私に、佐伯が声をかけてきたのだ。

「おまえ、最近、酒弱くなったんじゃないか? 結構、フラついてんじゃん。今度の接待は無理して来なくていいぞ? 飲めないと話になんないから」

今度の接待とは、大きな契約がかかったお酒の席で、部長と佐伯と私が同席することになっていたのだけど。

「何よ。私、全然酔っ払ってなんかないし! 佐伯の方が茹でダコみたいに真っ赤じゃないの! 佐伯こそ来なくてもいいから」

なんて、つい返してしまったのだ。

すると、佐伯がこう返してきた。

「へえ~、なら俺とさしで勝負するか?」
「えっ、飲み比べってこと? まあ、別にいいけど」

「じゃあ、決まりだな。よし、今からうちで飲むぞ」
「え! 佐伯んちで!?」

ビックリしている間に佐伯は私の腕を掴み、タクシーの後部座席へと押し込んでしまった。

こうして、私は佐伯と二人で飲み比べ勝負をすることなったのだけれど。

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