王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です


自分の行きつく先は“愛人”なのだろうかと、リリアンは最近悩む。

チエール王国の外交から帰って、数日が経った。ご褒美の効果が大きかったのか、会談は予想以上の成果をあげ、臣下たちは諸手を上げてギルバートの外交手腕を称えた。

いったいどんな魔法を使ったのか、ギルバートは相手に差し障りがないよう縁談は断りつつも、長年チエール王国と協議を重ねてきた交易問題を好条件でまとめあげ、新たな協定まで締結させてきた。

『別に、簡単なことだよ。王太子の頃からチエールのふところは探ってたんだ。あとは会話をこちらのペースに引きずり込めれば、容易いことさ。リリーからキスの許可をもらうことに比べたら、百倍は簡単だね』

そう言ってご機嫌に笑うギルバートに、リリアンは面食らったことを思い出していた。

(本気を出せばなんだって出来る……。そういえば、昔からそうだったっけ)

自室のソファーに座り膝を曲げてクッションを抱えながら、ぼんやりと昔の記憶を辿る。七年前、リリアンは不可解なものを見ていた。

それは偶然いつもより早く目覚めた朝のことだった。その頃、リリアンを毎朝七時に起こしに来るのはギルバートの役目だった。しかしそれより一時間も早く起きてしまったリリアンは、カーテンを開けようと部屋の窓まで近づき、驚くものを目にする。

L字型になっているモーガン邸のリリアンの寝室からは、屋敷の裏庭が見えた。裏庭には馬房と厩舎があり、馬を運動させる小さな乗馬場もある。

朝もやの煙る乗馬場で、誰かが軽快に馬を駆っていた。リリアンは遠目に見ても一目でそれが誰か分かる。大人の厩務員とは明らかに違う小柄な体型。ギルバートだった。

信じられない光景に目を瞠り、リリアンは窓から危うく落ちそうになるほど身を乗り出してしまった。それから慌てて踵を返し、寝間着にガウンを羽織った格好のまま部屋を飛び出した。
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