最愛婚―私、すてきな旦那さまに出会いました
05. はじめての…


「桃、桃! そこで考え込まないで! 危ない!」

「え?」


新居に届いていたカトラリーのセットを、どう収納しようかと、引き出しを床に出して思案していたところだった。

段ボール箱を抱えた久人さんに気づいた私は、慌てて場所をあけたつもりで、コントよろしく、同じ方向によけた彼とまともにぶつかった。


「きゃあ!」

「桃!」


倒れ込んだところに、段ボール箱が降ってくる。


「あいてっ」


ボコンという軽い音に、久人さんの声。

覆いかぶさるようにして、床の上の私をかばっていた彼が、身体を起こした。


「よかったー、重い荷物じゃなくて」

「すみません、大丈夫ですか?」


箱の中身は梱包材だったらしい。久人さんが頭の横を押さえているので、私もそこをなでた。しなやかに見える彼の髪が、案外硬いことを知った。


「うん。そろそろ腹減らない? なにか食べに出るか、取るかしようか」


私は今日、このマンションの新居に入って真っ先に取りつけた、壁の時計を見た。

十八時半。

引っ越し自体は業者さんにお任せしたから、家具も新しい調理器具も食器も、私たちが到着する前に収納済みだ。

あとは私物と、別便で届いた小物をしまうくらい。

久人さんに至っては、どうしても自分でやる時間が取れないとのことで、前の部屋の家財の梱包もすべて業者に一任していた。

その弊害として、新しい私室のどこになにがあるのかさっぱりわからず、今日は半日費やして、結局すべての収納を開けては確認するはめになっていた。
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