てるてる坊主にコロサレタ

ひとり

「本物みたいに綺麗な絵だねー。一瞬、写真かと思っちゃった」

「わわわ、見ないでー」


頭の上からの声に、わたしは色鉛筆から手を離して塗っていた絵の上に被さった。


「美晴、おっはよ」


奈穂実は笑いながら器用に机とわたしの間からスケッチブックを引き抜くと、かかげながら感心したようにうなずいている。


「虫とか動物が見上げる月ってこんな感じなんだろね」


雨の滴を飾っている露草の花の合間から見える月の絵を、奈穂実はそう例えてくれた。

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