身代わりペット

会いたいのはきっと私だけ

「あのですね、課長」

「ん?」

「これは一体なんなんですかっ!?」

殺風景な課長の部屋に、私の声が反響する。

終業のチャイムが鳴ると同時に、やっぱり私は課長に首根っこ掴まれてここに連れて来られた。

「ん?なにって、膝枕」

そう。

そしてなぜか、膝枕をされている。

私がしているんじゃなく、私が課長に膝枕をされている状態だ。


当たり前でしょ?みたいな声色で言われたけど、こっちは心臓ドキドキで全く当たり前なんかじゃない。

そんな私をよそに、課長は上機嫌で私の髪をクシで梳かしている。

鼻歌まで飛び出る始末だ。

「いやだから、なんで膝枕なんですか!」

抵抗して起き上がろうとしてるんだけど、頭を掴まれて動けない。

「ルイは俺の膝の上が一番好きだったんだ。この上でブラッシングをしてやるとノドを鳴らして喜んでいたよ」

すごく弾んでいる課長の声。

頭を掴まれて動けないから視線だけを課長に向ける。

……案の定、満面の笑みだった。

私は大きく息を吐いて、もういいや、とされるがままにしておく事にした。

昨日も頭をグリグリ撫で回されただけだったし、それだけでも変っちゃ変だけど、いかがわしい事はされなかったからほっといても大丈夫だろう・・・多分。

でもやっぱり緊張はするもんで、私の心臓はさっきから鼓動を速めている。

一生懸命なんでもないフリをするしかなかった。
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