今年も残り1か月となっていた。
「塔子さん!」
始業前、フロアのデスクに座ると、由美子に声を掛けられ、塔子は顔を上げた。

「あ、おはよ。由美ちゃん」
塔子はにこやかに答えた。
「おはようじゃありませんよ!」
由美子は小声で塔子の耳元で囁いた。
「髪下ろした方がいいですよ」

「え?」
その由美子の言葉にキョトンとした瞳を、塔子は向けた。
「キスマークついてます……」
由美子はそっと呟いた。

「え!!」
塔子は慌てて首に手を当てて、顔が熱くなるのを感じた。
「そっちじゃありません!」
少し大きな声で言った由美子の言葉に、塔子は慌てて手を変えた。

「ありがとう……ゆみちゃん」
苦笑しながら塔子はバレッタを取ると、髪を直した。

「塔子さんが珍しい。男……いつの間に……?」
ニヤニヤした由美子に、塔子は言葉を濁した。
「私だって、ね?」

「あー、怪しい!私の知ってる人ですか?」
更に追及の手を休めない由美子に、
「ほら、ゆみちゃん仕事仕事!」
そう言うと、塔子はパソコンに顔を向けた。