その笑顔が見たい

紗江からほぼ毎日のように連絡がある。
会うようになってから忙しい時は応えられないこともあると言ってあるから、返事もしたり、しなかったり。


しかし、ここ数日は、電話が来ても出ず、メールにも返信していなかった。
後回しにしていると先に紗江からまた連絡が来てということを繰り返していた。


昨日、葉月と会っている時にも何度か紗江から連絡が入っていた。
もうこれ以上は後回しにできない。
紗江との関係をもう終わらせよう。

目を通していた資料をしまい、紗江へメールをする。


『なかなか連絡できなくて申し訳ありません。今夜、会えませんか?』


あえて敬語を使って距離を置く。
スマホの画面を閉じ、そろそろ職場へ向かおうと長椅子から立ち上がった時、メールの着信音。
紗江からの返事だった。


俺からの連絡を待っていたに違いないと思えるほどの速さだった。


『お疲れ様です。予定は大丈夫です。うちに来ますか?』

いや、行かないから。
と軽く突っ込みながら手短に仕事が終わったら連絡すると返信した。


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