明日、君を好きになる
恋煩い



小野崎さんと食事に行ったその日の夜、私は体調を崩し、熱を出した。

このところ、日中出歩くことなど無かったのに、急に…それも炎天下の中何件も不動産屋を巡ったりして、疲れが出たのかもしれない。

夜が明けたら熱が下がってる…なんて、都合の良いことは無さそうだったので、仕方なく夜のうちに渚ちゃんに連絡し、急きょお休みをいただき、翌日は一日ゆっくり休ませてもらうことにした。


月曜日、午前6時過ぎ。

“ピピッ”

軽快な電子音が鳴り、脇で測っていた体温計を見ると、38度2分。

案の定、熱は下がらず、横になっていても、身体のだるさが否めない。

独り暮らしの寝室のベットで、ゆっくり身を起こし、水分補給の為に枕元に置いておいたステンレスボトルを手に取ると、中身の冷水を喉に流し込む。

熱の籠った身体には、ひんやりと心地良い。

壁掛けの時計を見ると、時刻は6時を5分ばかり過ぎている。

いつもなら、もう開店の準備が整い、来客を待つばかりの時間帯。

…そろそろ、小野崎さんのやってくる時刻だ。

“トクン…”

定刻に現れる涼し気な顔と、彼のお決まりのルーティンを思い浮かべてしまい、大きく動き出す心臓に手を触れ、落ち着かせる。

昨日初めて聞いた彼の素性に、少しびっくりしただけに決まってる…なんて、自分を誤魔化してみても、結局のところ行きつく先は同じ。

こんな感情、自覚してしまったら、どうしたら良いのか分からない。
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