東京恋愛専科～または恋は言ってみりゃボディブロー～

初めましてはビールと共に

土曜日の過ごし方は、ボサノバ調の曲が流れている行きつけのカフェでおしゃべりをするのが定番だ。

「へえ、それでお見合いするって言うことになったの」

中学生時代からの友達であるナオはそう言うと、マンゴージュースを口に含んだ。

「お見合いなんかじゃないわよ。

来週の金曜日に会社近くの立ち飲み居酒屋で１回だけ顔をあわせることになっただけよ」

そう言い返した私に、
「似たようなものでしょう」

ナオはさらに言い返した。

「まさか、相手が社長だったなんて知らなかったわ」

やれやれと息を吐いた私に、
「自分の会社の社長の顔を見たことがなかったの？」

ナオが聞いてきた。

「逆に聞くよ、ただの派遣社員が社長の顔を見る機会があると思う？」

「…言われてみれば確かに」

ナオは返事をすると、ブルーベリースコーンをかじった。