きみは宇宙でいちばんかわいい
𝙏𝙝𝙚 𝙒𝙤𝙧𝙨𝙩 𝘿𝙖𝙮 𝙀𝙫𝙚𝙧
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人生で最悪の日を聞かれたら、わたしはきっと、きょうのことを答えると思う。

高校2年生に上がった日。
4月、1学期の、最初の日。



「――なな。俺さ、好きな子ができたんだ」


なにを言われたのか、一瞬、ぜんぜんわからなかった。


織部(おりべ)(しゅう)くんは、保育園からずっといっしょの、いわゆる幼なじみの男の子。

わたしはこれまでの人生において、彼以上にかっこいいと思う存在に出会ったことがない。


つまり、わたしにとって柊くんは、始まりにして、最高の、好きな人だったのだ。


「……え、そうなんだ。……えっと、同じ学校の、子?」

「いや、違うと思う。実は、名前も知らなくてさ。……一目惚れ、なんだ」


3歳の頃に出会って、かれこれもう、十数年。

柊くんのいちばん傍にいた女の子はずっとわたしだったのに、名前も知らない誰かに、こんなにも簡単に、心を奪われてしまうものなの?


「なんとなく、ななには、一番に報告しときたくて」


“一番に”。

いつもすごく嬉しいはずの言葉が、まさか、むしろまったく逆の意味を持つ時がやって来るなんて、思いもしなかった。


「……うん、ありがとう。応援、してるね」



だから、きょうが、人生で最悪の日。

大切に育ててきた初恋を、失くしてしまったのだから。




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