そのくちづけ、その運命

「繋がる」

「結局あれから、1年も経っちゃったけどね。
……この前実琴に会いに行ったときは、
正直緊張で平静保ってられてるか不安だった」


話にひと段落着いたのか、真人はへへっと笑いながらそう言った。


「オレ、実琴に会って、…と言っても一方的にだけど、
……救われたんだ」

彼は「救われた」と言う。
それは、私の方なのに。私がしたことなんて、本当に些細なことで、


「結局高校卒業してから1度も実琴を見つけられずにいて、だからあのファミレスで見つけた時はマジで興奮したんだ―――すごく嬉しくて」

「でも…」
と彼は続ける。


「はっきり言って怖かった…
オレは実琴のことこんなに好きだけど、受け入れられなかったらどうしよう、とか」

…そんな。
そんなこと――…

「だから、嬉しかった…
実琴が嫌じゃないって言ってくれて」


少しの間。

彼は私から目をそらさない。
ずっと優しく目を細めて私を見ている。

「ずっと言いたかった。ありがとうって」

どうしよう、止められない。

「あれからさ、自分の本当にやりたいことがわかったんだ。道を見つけられた」

…想いが、あふれそう。

「今のオレがあるの、ぜーんぶ実琴のおかげ」


真人くんがまっすぐに私を見ている。
偽りのないその瞳には私の姿が映っている。


すると、頬に何か冷たいものが伝っていくのを感じた。

…涙だ。

私は知らないうちに泣いていた。


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