私たち政略結婚しました!~クールな社長と甘い生活~
夫に恋して

目を覚ますと、夫の大きな体が私の視界を塞いでいた。

カーテンの隙間から朝日が漏れて来る。

彼の逞しい胸に抱かれて、まどろんでいるから、部屋の中が明るいのに気づかなかった。

愛しい人の、腕の中で目覚めたなんて。

まるで夢みたい。

体に巻き付けられている彼の腕から、すり抜けて、顔がよく見える位置まで上がりたい。

腕から抜け出すのは、難しそう。

彼は、私をどこにもやらないというように、しっかり抱きしめたままびくともしない。

抱かれた格好のまま、彼の肩に手をかけて上によじ登る。

時々、喉の奥から唸るような低い声が聞こえて、ピクンと体が反応する。


上まで上がって、普段、背の高い彼の触れることのできない髪に、触れようと手を伸ばす。

洗ったままの、何もつけてない彼の髪。

しっとりして思ったより柔らかいんだ。

彼の寝顔をよく見たい。

すっとした切れ長の目。

閉じたままの目に、軽く唇を当ててみる。


おでこをくっ付けるようにして、上から彼の顔を見下ろしてみる。

高陽さんの顔がほんの数センチ前にある。

眠ってる顔、初めて見た。

いつもは、きりっとしたいい顔つきをしてるけど、目を閉じた無防備な顔も素敵だ。

そーっと近づいて、お早うのキスで目覚めさせてあげたい。

もう少しで触れられるという時に、パチッといきなり目があいた。

切れ長の目が、まぶしそうにこっちを見てる。


「何してる?」くすぐったそうに言う。

「えっと…………」私は、いたずらを見つけられたように、もじもじする。

「もっとこっちに来いよ」

もぞもぞっと体を動かしたら、反射的にぎゅっと逞しい腕に抱き寄せられる。

「あっ」

顔に近づく手前で捕えられて、彼の固い胸に押し戻された。

彼は、唸るような低い声で何かつぶやいて、私の頭に顎をのせた。
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