先生、僕を誘拐してください。
二、青空を壊したい。


 朝、冷房の点検が終わり、学校中の教室に今日から冷房が入った。
夏を感じさせず、冷房の近い席は凍えるように寒くなるので、カーティガンを用意しなくてはいけなくなる。私は、夏の匂いを近寄らせない冷房が嫌いだ。
 相変わらず、敦美先生は私に気があるのかチラチラと見てくる。
けれど今日は進路指導室へ何人か私立文系コースの子たちが入って行くのが見えた。

私立は夏休み前ぐらいから、推薦校の発表がある。
内申点が良い子から順に行きたい希望校が決まり、指導室で面接や小論文の指導が始まるはずだ。

学校に来ている求人票は、職員室の主任の後ろにあるガキ付きの棚の中。
ファイルに入って纏めてある。先生の許可を貰い、職員室か先生が同席の場合、進路指導室で閲覧可能になっている。

それを職員室でぱらぱら見ていた。ピンとくる会社がないというか、自分が働くための一番の希望さえ見つかっていないのに、さも考えているかのように見て時間を潰していた。

「武田先輩」
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