溺愛CEOといきなり新婚生活!?
【ご愛読御礼番外編】溺愛CEOには要注意

 まったく、人が変わったようだ。

 社用車の運転席、バックミラーで社長である永井海都の様子を時折見るのは、私が彼の秘書を兼任しているから。
 つい三か月前までは、移動中でも気難しい顔をして、かかってきた私用の電話には余程のことがない限り応答しなかった。


「――うん、わかった。気をつけていっておいで」

 なんという穏やかな声……。
 こんなに車内の空気が穏やかなのは、間違いなく花澄さんのおかげだ。私と二人きりの時は、無言の時間もしばしばあったのに。


「花澄さんですか?」
「そう。今日、俺のためにパエリアを作るから、帰る時間を教えてほしいって。これからスーパーに行くらしいんだよ」
「パエリアですか……随分と凝ったお料理を作られるんですね」

 バックミラーでちらりと彼を見遣ると、仕事中だというのに頬を完全に緩めて、窓の外の景色を優しいまなざしで眺めていた。


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