あぁ、どうしよう。

見なくていいものを見てしまった……


11階と10階を繋ぐ非常階段の途中で行き場をなくしたあたしは、息を潜めて階段に小さく座り込んでいた。

退社後、いつもは考えないような思いつきで非常階段を使って1階まで降りようとした。

そんなことをしようと思ったあたしがバカだった。

昨日の夜見た健康をテーマにした情報番組に影響されて、日頃の運動不足解消のために少しでも歩こうとか。そんなことを考えたのがそもそも間違ってた。

そのおかげで、あたしはもう10分以上階段の途中で足止めを食らっている。

非常階段の手摺の下の壁は向こう側が見えないコンクリートでできているのだが、何のためのデザインなのか、所々に縦に細長い隙間がある。

その隙間からひとつ下の階の踊り場にいる1組のカップルの姿があたしの座る位置から覗き見えていた。




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