カノジョの彼の、冷めたキス
落ち着かなきゃ。忘れなきゃ。
そう思うほどに、鼓動はより激しくなる。
フラフラした足取りで何とか自宅マンションまでたどり着いたあたしは、靴も脱がずに玄関に座り込んだ。
何度か深呼吸をして心を落ち着かせて、それからカバンからスマホを取り出す。
少しの躊躇いを感じながらも、あたしは高下さんにメッセージを送った。
「金曜日の夜、大丈夫です」
メッセージはすぐに既読になって、高下さんから喜びを表すようなスタンプが送られてくる。
バカみたいに舞っているそのスタンプを見つめながら、あたしは別の人の笑う顔を思い出してせつないため息を吐いた。