カノジョの彼の、冷めたキス
新たな関係
あたしとの約束がなくなった高下さんは「こっちに住んでる知り合い呼び出して飲むわ」と明るく笑って手を振ってくれて。
自覚的なのか無自覚なのか、あたしに約束をすっぽかした罪悪感を残さないようにしてくれた。
高下さんと別れたあと、あたしと渡瀬くんは手を繋いだまま駅へと向かった。
駅まで向かう道中、何も話さない渡瀬くんにものすごくドキドキとした。
あたし達は互いに別々の街に住んでいるから、駅に着いたらそれぞれ違うホームから出る電車に乗らなければいけない。
そろそろ離れなくちゃいけないかな。
改札の前で繋がれていた手を解こうとすると、渡瀬くんが離れそうになった手をぎゅっとつかみなおした。
繋がった手を見つめるあたしの胸が、トクンとせつなく甘い音をたてる。
まだ離れたくないな。