カノジョの彼の、冷めたキス

旅先の夜に



旅館の温泉に浸かってようやく部屋に戻れたのは、夜の9時過ぎだった。

うちの会社の社員旅行では、宴会のときに部署ごとにそれぞれ出し物をするのが通例になっている。

今回はあたしと同期数人が営業部の出し物のまとめ役に当たってしまって、準備や後片付けに奔走しないといけなかったのだ。

ふぅっと一息つきながら部屋のドアを開けると、室内は誰もいなくてしんとしていた。

大浴場に行くときに部屋に置きっぱなしにしていたスマホを見ると、同室だった営業部の後輩からメッセージが入っていた。

メッセージには、彼女はその同期たちと旅館のカラオケルームに行くという内容とともに、同じく同室の皆藤さんは副社長に呼ばれたということが書いてある。

部屋のカードキーはあたしが大浴場に持って行ったものがひとつ。

もうひとつは皆藤さんが持っている。

後輩の彼女は遅くに部屋に戻ってくる予定だけど、あたしも遅くまでどこかに出かけるようなら連絡してほしいとのことだった。


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