カノジョの彼の、冷めたキス
優先順位
「渡瀬くん、そろそろ起きないと朝ごはん食べてる時間なくなるよ」
ダイニングテーブルにトーストとベーコンエッグ、それからコーヒーを用意してから、まだベッドの中にいる渡瀬くんを揺すりながら声をかける。
「んー。起こして」
「起こしてるよ、さっきから」
布団の中で寝返りを打つ渡瀬くんに呆れ顔で答えると、彼がちょっと振り向いてジッと見上げてきた。
「もっとちゃんと起こして」
「ちゃんと?」
引っ張り起こせってことかな。
布団を捲り上げて両腕を引っ張ろうとつかんだら、逆に引っ張り返されて渡瀬くんの腕の中につかまった。
うつむけに上に乗っかるかたちになってしまったあたしに、渡瀬くんがキスをする。
数回唇を重ねたあと、彼があたしの頭を両手で抱えながら至近距離で悪戯に笑った。
「目ぇ覚めた」
寝起きの無防備な笑顔に、心臓がドクンと跳ね上がる。
「もう!早く起きないと、先行くからね」
照れ隠しに怒るあたしを見て、渡瀬くんはまだ楽しそうに笑っていた。