カノジョの彼の、冷めたキス

カレへの信頼



温かいものが頬に触れる感覚で目が覚めた。

薄っすらと開いた目に、微笑む渡瀬くんの姿が映る。


「おはよう。起こしちゃったな」

「おはよう。あたし、寝坊した?」

渡瀬くんがあたしより先に起きるのは珍しい。

慌てて体を起こそうとすると、彼が笑って制止した。


「まだ早いから大丈夫。あと1時間くらい寝てても、出勤時間には余裕で間に合うよ」

ベッド横のサイドボードの置き時計に目をやると、まだ朝の5時台だった。


「まだ早いなら、渡瀬くんもまだ寝てればいいのに」

彼が寝ていたはずの空間がぽかりと空いていることを寂しく思う。


「俺もそうしたいけど……今日はさすがに一回うちに戻って着替えないとまずい」

渡瀬くんが、少しシワが寄った昨日着ていたスーツの裾を軽くつかんで苦笑いした。

あぁ、そうか。

そのまま出社すると、昨日どこかに泊まってうちに帰らなかったことに気付かれてしまうよね。

社員旅行で会社の同僚たちの何人かにはあたしたちの付き合いがバレてしまっているみたいだから。

変に噂されたりしても困る。

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