カノジョの彼の、冷めたキス
作りかけのデータを完成させようと、キーボードにのせた指を忙しく動かし始める。
するとまたすぐに、新着の社内メールが一件届いた。
差出人が誰かはおおかた想像がついていたけれど、万が一、他部署で残業している人からだったら困るので、すぐに開いてみる。
だけど……
『コーヒー』
それは、確実にそのまま再送信してきたと思われるさっきと同内容のメールで……
あたしは二列向こうのデスクで素知らぬふりで仕事を続ける男の背中を睨むと、また即効でメールを削除した。
再び自分の仕事に戻ろうとして手元の資料とパソコンを見たあたしは、小さくため息をつく。
くだらないメールに横槍を入れられたせいで、どこまで数字を入力していたのかわからなくなった。
少し苛立つ気持ちを押さえながら、もう一度資料と作りかけのデータを上から順番に確認していく。