カノジョの彼の、冷めたキス
「美味しいもんとか見に行く場所もいろいろあるよ?」
そんな私の心を読み取ったかのように、高下さんがにこにこ笑いかけてくる。
「いいですね。でも、午前中の新幹線のチケットをとってるんですよね」
「そんなん、時間変更すれば?せっかく来たんやし」
「それもいいかもですね」
深く考えずに口にしたら、高下さんが後ろに置いていたカバンからスマホを取り出した。
「ほんまに観光して帰るなら案内するよ。斉木さんの連絡先聞いていい?朝連絡くれたら、ホテルまで迎えに行くし」
高下さんににこりと笑いかけられて、私もつられるようにカバンからスマホを取り出した。
互いにメッセージアプリを開いてID交換する。
「どうするか決めたら連絡して」
そこまで本気で観光に連れて行ってもらうつもりもなかったけど、高下さんのほうはやけに乗り気だった。