【完】触れたいのはキミの鼓動
寝ても醒めても

日常化し過ぎた光景  side:小桜


暑くて、うんざりする毎日。
制服のブラウスの裾をパタパタとしながら、私…神谷小桜(かみやこはる)は、目の前の大きなわんこ基、体の大きな男子に声を掛けていた。


「まぁた、ペン買ったの?こないだ新しいモデル買い換えたばっかじゃん。しかもこれ、替え芯式でしょー?なんで、リフィルじゃなくてペンごと買うのよ?いつもいつも…?」


みっちりと入っているペンケースを指差すと、そいつはにへらと笑って、こう返す。


「ん__…?目に、入ったから?」


そのなんだかよく分からない答えに私はもう一度話を元に戻そうと試みる。


「は…?それで、ペンケースが女子並みにパンパンになる理由になるとでも?」


ちょっぴり眉間にシワが寄ってしまうのは、私が話しているのにも関わらず…てか、半ば怒っているにも関わらず、相変わらずにこにこにへらと笑っているこいつ…。
須賀未来(すがみらい)のせいだ。


「ん__…可愛いって思ったから?」


的を得ない回答の連続に業を煮やした私は、ビシ!とペンケースに指をやり叫んだ。
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