ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
エピローグ

「近いうちに、美姫のご両親に挨拶しに行くから、予定を確認しておけよ」


「…うん」


湯船の中、蒼斗の胸に背中を預けたまま答えた。


2人でお風呂に入るルールは、この部屋に来た最初の日に決められた。


少し膨らんだお腹と大きくなった胸、そして肉がついた体を明かりの下で見られる事に最初は抵抗したものの、3日も経つと慣れと言うのは怖い。


2人で入るのが当たり前になり、蒼斗の帰りは不規則だが、帰りを待って湯を張り、一緒に晩ご飯を食べ、一緒に台所に立ち、洗い物をする男の横でお皿を拭く。


家にいる間は、トイレ以外、常に側には蒼斗がいることが当たり前になり、くすぐったい嬉しさがある。


ふふふ…


「なに、笑ってるんだ?」


顔を斜め上に上げ、愛しい男の顔を見る美姫。


「蒼斗って、意外と心配性だよね」


「はあっ…意外とってなんだよ」


ため息混じりに、不満をこぼす。


「だって、トイレ以外の家の中、ずっと側にいるもん。そのトイレだって、鍵閉め禁止だし」


「一緒にいるのに離れている理由がわからん。トイレの中で何かあった時、鍵を閉めていたらすぐに駆けつけれないだろうが…それに会えなかった数ヶ月の時間は戻らないその分、一緒にいたいと思うのは俺だけなのか?」
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