Fragrance



大学の研究室の奥で、ずっと前から相川 瑞帆(あいかわ みずほ)は秘密の関係を持っている。

中毒にさせているのは瑞帆で、その中毒者は大学准教授の渡瀬 香(わたせ かおる)。


日本の私立系大学の中でもトップ3に入る東京の新宿付近にあるその大学の一室で不定期に行われるその行為。


「ねえ、彼女に怒られないの?」

クスクスと笑いながら瑞帆は、フォトフレームの中に入った彼の彼女をネイルがしっかりと施された指で刺しながら耳元で囁いた。


全ては遊び。


全てはゲーム。


惚れたらおしまい。


「別に怒らないでしょ。連絡もほとんどしなくても黙ってるような子だし」


ニッコリと笑って香はゆっくりと瑞帆の服を脱がせていく。


瑞帆の長いウエーブのかかった髪の毛を後ろにかきあげて、首筋にキスを落とした。


フォトフレームの中にいるその女の人は嬉しそうな顔でその男に寄り添っている。


誕生日プレゼントに職場に置いてねと言われたので仕方なく置いているらしいその代物が、毎回瑞帆のことを監視しているようで、少しだけ居心地はよくなかった。


「最低な男」


「その最低な男のこと好きなくせに」


「身体はね」


「そんなこと言ってると単位はやらないぞ」


身体中をまさぐり合いながら、部屋の外のキャンパスで大学生たちの笑い声をBGMにする。


香の舌がまるで蛇のように身体中を沿っていき、快楽の深海へと引きずりおろした。


ここまでくると、フォトフレームの視線は気にならなくなる。


声を出さないように口を押えていると、腕を後ろに組まされて声を防げなくされた。


「ねえ、雌の匂いがする」


「花とフルーツの香りですよ、せんせい?」


「なんの香水つけてんの?」


「DiorのAddict」


「Addictって中毒って意味だろ。なんて過激な名前の香水使ってんだよ」


「嫌いじゃないでしょ」


笑みを浮かべて唇を舐める。


四つん這いになって、香自身を受け入れた。


激しく奥深くまで犯される。


まるで中毒者のように香は瑞帆に依存している。


彼女と別れてもいい。


そんな言葉を何度も吐いて、瑞帆の全てを手に入れようとする男を深く愛せるとは到底思えなかった。

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