午後二時。デスクの内線電話がけたたましい音で鳴り響いて、私はびくりと肩を震わせた。

あの人が来た。

電話の主は一階の来客用受付カウンターで、綺麗な声をした受付スタッフが予想通りの内容をアナウンスした。

『デザイン会社M’sの御堂様がいらっしゃいました。お迎えをお願いします』

……やっぱり。

受話器を置いた私はがっくりとうな垂れて、大きなため息をひとつ。
それを耳にしてしまった通りすがりの先輩が、無視することも出来なかったのだろう、やむなく足を止めた。

「その顔はもしかして、お迎えの時間?」

重苦しく頷いた私を見て、先輩は『ああ、また始まった』みたいな顔でやれやれと笑う。

「そんなに彼のことが嫌い? 私は素敵だと思うけど」

「……軽い人は、好きではありません」

憎しみを心底込めて言ってやったのだが、理解はしてもらえなかった。
先輩はよくわからないといった顔で首を傾げている。

「いつもニコニコしていて感じがいい人じゃない。社長なのに気取ったところもないし。その上、イケメンでスタイル抜群。完璧ね」

同じことを誰もが口を揃えて言う。
『デザイン会社社長』という肩書きや『イケメン』という見た目にみんな騙されているんじゃないだろうか。

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