Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
「女の子を見れば次から次へと口説き始めるような人ですよ!?」

「でも実際、彼、仕事もデキるし……って、佐藤さんは知らないか。『開発』じゃなくて『総務』だもんね」

そう言われると、もう黙るしかなかった。
先輩が商品開発部のキャリアウーマンであるのに対し、私はしがない事務職員。

先輩は彼と『お客様のニーズに応え、より素晴らしい商品を作るためにああしようこうしよう』なんて真面目な仕事トークを交わすのだろうけれど、私と彼との会話といったら、受付から会議室まで案内する間に簡単な世間話をする程度。
業務上の直接的な関わり合いなどない。

それに、と先輩が付け加えた。

「彼、田所部長のお気に入りなのよ」

田所部長とは、ここ、商品開発部の部長であり、『商品開発部所属の事務職員』である私にとっては上司にあたる。
この部署のすべてを取り仕切る権力者で、人望も厚い。私だって、尊敬している。

「ええ、知ってます」

田所部長が認め、何年も取引を継続するくらいだ。私からはダメ男にしか見えない彼でも、仕事をする上では信頼に足る人物なのだろう。
けれど、私がそれを知る機会には恵まれそうにない。

「……お迎えにいってきます」

まだ少し暗い顔のままデスクから立ち上がった私を奮い立たせようと、先輩は勢いよく肩を叩く。

「まぁ、”こんな日”にイケメンを拝めるなんてラッキーくらいに思っておくことね」

……”こんな日”くらい、会いたくなかったなあ。

そんなことを思いながら、先輩に一礼してオフィスを出た。エレベータに乗って、いざ彼の待つ一階受付カウンターへと向かう。
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