あずゆづ。
スケッチさせてください

それから私は昼休みも放課後もゆづくんのそばを離れなかった。

前は、昼休みはひよりとお昼を食べて、それから校庭の木の下でスケッチしたり、ゆづくんの筋肉ストーカーをしたりして過ごしていたが。

しかし。

今では堂々とゆづくんにぴっとりくっついて、彼の筋肉を至近距離で観察し放題です!!

前みたいにコソコソしなくていいというこの開放感!
素晴らしい!


「あず」

「ハイ」


そんな、待ちに待った昼休み。

スケッチブックが入ったリュックを背負いゆづくんの元へ行こうとしたところをひよりに呼び止められた私。


私の背負っていたリュックを彼女の白くて小さな手にがしっとつかまれ、そのまま強引に自分の席に座らされた。


「どういうことか説明してもらいましょうか」

「え、えーと……」


ひよりは、なにか勘づいたように私をじっと見つめてくる。


正直ひよりと昼休みを過ごさなくなってからこうなることは覚悟していた。

ひよりは勘が鋭いからなぁ。


えーっと、一体何から話せばいいのやら……。

とりあえずここで、言ってはいけないことのおさらいをしておこう。


言ってはいけないことその1:私がゆづくんの筋肉を描いていること。

言ってはいけないことその2:ゆづくんがメイド服を着てバイトしていること。


…よし、この2つさえ言わなければ大丈夫!!


「あ、あのね、ゆづくんが筋肉で私ゆうちゃんとパフェでメイドが告白されて…!!」

「………は?」

「…ふおおおお…何から話していいかわかんないよ~ひより~……!!」


しかもさらっとメイドとか言っちゃったからゆづくんの鬼の形相がひより越しにこっち向いてる~!!

怖い~!!!

ゆづくんの地獄耳~!!


< 59 / 204 >

この作品をシェア

pagetop