運命は二人を
視線の先


【美也(みや)side】

『le plus bas homme!』(最低な男)

目を向けると、綺麗な女性が、目の前の男性にコップの水をぶっかけた所だった。

おそらくフランス人女性だろう。

そして、別れ話なのだろう。

その女性は、ヒールの音も高らかに、立ち去って行った。

ふと、強い視線を感じた。

まるで、私の身体ごと、蜘蛛の糸で絡め取られるような気がした。

水をかけられた日本人だろう男性が、私を見ていた。

まるで、《諦めろ、逃さない》と言う言葉まで、私の脳内に響いてくるようだった。

私は慌てて目をそらし、ピアノの上で止まったままだった指を動かし始めた。

ピアノの奏でる音で、再びレストランの中は、普段通りの時間を取り戻した。





< 1 / 86 >

この作品をシェア

pagetop