王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
秘密の逢瀬
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「ウィルっ!」


 エメラルドグリーンの大きな瞳は、透き通るような緑の中から目一杯のきらめきを放っている。

 ウィルと呼ばれた青年に詰め寄るのは、四年の間で格段に美しくなった少女、マリーアンジュ・イべール。

 齢十六を迎えた美少女の笑顔に、目の前にいる黒髪の青年は一瞬息をつぐのも忘れたようだった。


「本当に見えたわ! やっぱりウィルって物知りなのねっ」


 青色だった空が、沈む太陽とともに橙へと変わっていくいつもの時間。

 緑をびっしりに張り巡らせた生け垣に囲われたイべール伯爵家の庭。

 マリーが弾むように駆けて行ったのは、何かから身を守るようにひっそりとたたずむ屋敷の裏庭の隅。

 そこには、傾いていく陽射しを受け金の輪郭をまとう彼がいた。
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