強引社長といきなり政略結婚!?
絶対的権力を前に沈没寸前


「汐里さん、寝不足ですか?」


欠伸を何度も噛み殺しているのをゆかりちゃんに感づかれてしまった。
涙目になりながら首を横に振る。さすがに、一成さんとひと晩過ごしたせいだとは言えない。

そんな私を見て彼女が、ピンと人差し指を立てる。


「あ、わかった。またT・Eでも観ていたんですね?」


百点満点をあげたくなるような笑顔で小首を傾げる。
ゆかりちゃんにもあの映画の良さを力説したことがあったっけ。


「……あーうん、まぁそんなところ、かな」


目を泳がせてしまった。


「今の間はなんですか?」

「べ、別になんでもないよ」


ちょうどその時、彼女の追求から逃れられる鐘の音が店内に鳴り響いた。ドアについている、カランコロンという音だ。

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