キミとひみつの恋をして

secret.7



──例えば。

部活中、ドリンクを渡す時にわざと指に触れるとか。

廊下で部活すれ違う時に、こっそりと微笑むとか。

放課後、帰るタイミングを少しずらして偶然を装ってみたりとか。


まわりにバレないようにしながら付き合うのは、ドキドキしてなかなかにスリリングだけど……

同時に切なくもあった。

もし、バスケ部に恋愛禁止の掟なんてなくて、普通に二ノ宮と付き合っていられたなら。

そう思うことが、何度もある。


内緒で付き合う。

そう決めたのは私たちで、不自由な交際になるのも承知だったけど。

学校や外では友人として過ごすのは、気持ちを抑えないといけないことが意外と多くて苦しかった。

それは、片想いしていた時の苦しさとは少し違うもの。


人目を気にせずに声をかけたい。

もっと気軽にデートの約束をしたい。

手を繋いで、帰りたい。


でもそれも、想いが通じ合ってるのなら、贅沢な悩みなのかもしれない。

二ノ宮と付き合えている。

片想いしていた時なら、それだけでも幸せだと思えたこと。

それが、いざ付き合ったら足りなくて。

どんどんワガママになっていく自分が、私はあまり好きじゃない。

二ノ宮への大切な想いが汚くなるみたいで、嫌なのだ。

恋をしたら世界がキラキラして見えるなんて、そんなのうまくいってる時だけ。

恋をしたら、醜い自分が顔を出す。

それもまた自分なのだと認めるには、私の恋愛経験値では難しいのが現状だ。


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