熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
許嫁の不貞を断罪
黒塗りのリムジンの後部座席から軽く身を乗り出すと、フロントガラスの向こう側に、ウチの会社の本社ビルが聳えるように建っているのが見えた。
成田空港からリムジンに乗り込み、途中軽い渋滞に巻き込まれながら一時間半。
目的地をこの目にして、私は無意識にホッと息をついた。


ここは日本有数のオフィス街、東京丸の内。
平日夕方の車道はちょっと混んでいるけれど、リムジンは先の二つの信号に引っかかることなく、ビルの正面玄関前に滑り込んだ。


ビルの車寄せには、スーツ姿の中年男性が数人、迎えに出ていた。
彼らが背筋を伸ばして待ち構える中、ほとんど振動を感じることなくリムジンが停まる。
運転手がサイドブレーキをかけると、『キッ』と甲高い音がした。
その途端、後部座席のドアに向かい、男性たちが進み出てくる。


「ご出張、お疲れ様です、社長」


外側から開かれたドアの向こうから、そんな出迎えの挨拶が聞こえる。
私の隣に座っていた、極上のオーダーメイドスーツを身に着けた『社長』が、小さく頷きながら外に降り立った。


開いたドアから、十月の東京らしい湿気の少ない風が吹き込んでくる。
身体を解すように腕を伸ばしている彼を、私はシートに座ったままでそっと見上げた。
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