『恋をするところから始めよう』と宣言されて、『恋人』になって第一日目。
私は優月と、一緒に会社に行く約束をしていた。


普段優月は、穂積家本邸の敷地内にある離れの別邸で生活している。
別邸と言っても、極普通の住宅、軽く三軒分の大きさで立派なお屋敷だ。
私の家から徒歩でほんの十分足らずの位置にあり、彼はいつもそこから運転手付きの車で出勤している。


昨日の帰りに優月が『朝、ウチおいで。一緒に出勤しよう』と言ってくれたから、私は駅には向かわずに真っすぐ穂積家を訪ねた。


ところが、私を出迎えてくれた本邸のお手伝いさんが、ちょっと困った顔で『優月様、ご朝食にまだいらっしゃらないんです』と言う。
優月はそれほど朝に弱い人ではないから、私はまさか寝坊だとは思わなかった。


何か、至急の対応が必要な仕事が入ったのかもしれない。
一番にそう思った私は、お手伝いさんから優月の分の朝食と玄関の合鍵を預かって、離れの別邸に向かった。


合鍵を使う前に一度インターホンを鳴らしてみたけど、やっぱり応答はない。
だから私は、迷うことなく中に入った。


もし私の予想通り、優月が仕事に当たってるようなら、午前中のリスケ対応が必要になるかもしれない。