熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
優月はどこか不機嫌な様子で言い捨てると、私に視線を向けないまま、部屋を横切ってドアの方に向かった。
ドアレバーに手をかけながら、私を振り返ってくる。


「うちの親には俺から話つけてやる。そこまで言うなら、好きにしろ」


素っ気ない声で向けられた言葉に、私は一瞬ドキッとしながら視線を返した。


「だが、断言してやる。お前、絶対、自分から俺んとこ戻ってくるから」


強気に言われて、私は更に鼓動を跳ね上がらせながら、ムッと頬を膨らませた。


「勝手に決めないで。そうならない自信があるから、婚約解消するんじゃない」

「俺じゃなきゃダメだって思うよ。絶対にな」


言い返した私の言葉は完全にスルーして、優月は自分の言葉を繰り返す。
ムカッとして拾い上げたクッションを、私はその背に向かって思いっきり投げつけた。
けれど彼はそれより一瞬早くドアを開け廊下に出ていた。
後ろ手で閉められたドアにクッションがぶつかり、そのままポテッと床に落ちるのを見て、私はむうっと唇を尖らせる。


「……優月の方が、私じゃダメなんじゃない」


唇を噛んで、そう言い捨てる。
自然に下向いた視界に時計の針が映り込み、私は慌てて着替えを始めた。
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