熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
「~~か、帰って!!」


どうしようもなく胸の鼓動が騒がしくて、私はそう叫びながら優月の背中をドンと押した。


「綾乃?」


私には散々無自覚だなんて言っておきながら、優月だって全然わかってない。
突然背を押されてムッとしたように振り返る優月の顔を、私は正面から見ることもできない。


「忠告通り、警戒します。だから、こんな時間に優月が私の部屋にいちゃいけないの!!」

「えっ?」


不満気な優月の返事を無視して、私はその背をドアに着くまでドンドンと押し進めた。
ドア口まで進んで勢いよくドアを開けると、その隙間に優月を押し出す。


「おい、綾……」

「お休みなさい。さようなら!!」


廊下に追い出された優月が、何か言いたげに振り返ったけど、私は彼の鼻先でバタンとドアを閉めた。


「……お休み」


ドアの向こうから、溜め息交じりの優月の声が聞こえる。
廊下を離れていく足音が続き、ドアの前から優月の気配が遠のいていく。
それにホッとした途端、身体から一気に力が抜け、私はその場にペタンと座り込んだ。


「あああっ、もうっ……」


胸が騒いでいる理由が自分でもわからない。
ぎゅっと握った拳を押さえつけ、心臓を圧迫しようとした。


それでも、説明できないドキドキが治まらなかった。
< 49 / 255 >

この作品をシェア

pagetop