熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
「あ……」


短い声を発しながら、私は背後を振り返った。
さっきまでとは全然違う険しい表情をした優月が、私を見下ろしている。
私は呆然としたまま、彼を仰ぎ見た。


畳にぺったりと座り込んでいる私を押しのけると、優月は固く握った拳を、すごい勢いで進藤さんに振り下ろした。


「あっ……!!」


私の発した小さな悲鳴は、バキッという痛そうな破壊音に掻き消された。
優月の足元で、進藤さんが左の頬を押さえて倒れ込んだ。


「優月……?」


いきなり殴られる格好になった進藤さんは、そのおかげでだいぶ覚醒したようだ。
それでも何が起きたかわからないというように、何度も瞬きを繰り返している。


「お前、綾乃に何をっ……!!」


困惑している進藤さんに、優月は激しい怒声を放った。
呆けている進藤さんを見て、グッと声をのむ。
そして彼に踵を返すと、優月は私の腕を強引に掴み上げた。


「帰るぞ、綾乃」

「あっ、ま、待って……」


ほとんど引き摺られながら、私は優月の後から格子戸の外に転がり出た。


「ゆ、優月っ……!」


歩幅の差を全く考えてくれない優月に、グイグイと手を引かれて店を出る。
そのまま、夜のオフィス街に連れ出されていた。
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