朝はココアを、夜にはミルクティーを
1 契約社員の悩み


昔むかし、あるところに……いや、そんなに昔ではありませんが。
数年前、あるところに、全国でも有名な大手自動車メーカーに正社員として勤めていた女の子がいました。

彼女は大学在学中、事務職に就きたいと懸命に就職活動し、頑張って頑張って頑張った末に誰もが知っているような大企業に就職することが出来たのです。

その職場では、ニ歳年上の営業職の次期エースと呼び声の高いイケメンの先輩と出会い、意気投合し、そして交際に発展。
彼とはニ年ほど付き合い、「そのうち結婚しような」などと結婚の話も出され、なんて絵に描いたような素敵なオフィスラブ!と彼女は幸せの絶頂にいました。

「正社員でしっかり仕事をしていて、ボーナスもたくさんもらって、しかも結婚の話も出ている」
これだけで両親は大喜び、そして友達にも羨ましがられることが多く、まさに順風満帆の人生。

それが、二十四歳の時。


そこから転落するのに、時間はかかりませんでした。


「営業の小池くん、同期の山越さんと結婚するんだって〜!超お似合いだよね〜!!」


彼女は聞き間違いかと思いました。
なぜならば「小池くん」というのは彼女の交際相手の名前で、「山越さん」というのは彼女にとって良き相談相手となっていた事務の先輩の名前だったからです。

急いでニ人に確認をしました。
するとどうしてなのか分かりませんが、山越さんの方が憤然とした表情で彼女を罵ったのです。


「あなたはただの浮気相手よ。本命は私だったの。今頃気がついたの?面白かったわ〜、あなたのしょーもない恋愛相談!」


ガーン。
これこそまさに、ガーン、という効果音がしっくりくる瞬間でした。

さらに追い打ちをかけるように、小池くんもこう言い放ちました。


「そこそこ楽しかったよ、お前とのニ年間。ありがとな」


ガーン、ガーン、ガーン。
彼女は大きな大きなショックを受けました。

しかし、彼女にとってのショックはそれだけではなかったのです。


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