記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
3 何かの間違いだと言ってください
「間に合ったみたいですね」
驚愕している雪乃の隣で、向島は突然の来訪者に笑顔で挨拶をしている。
二人の顔を交互にみながら、冷静になりはじめた頭は男が簡単に入れたということは、同窓会に参加する人間だと理解しはじめた。
同学年の人間と関係を持つ以上に、最悪なことはないかもしれない。
雪乃は、二人が談笑をはじめた隙に帰ろうと、向島の背中に隠れながらスツールを降りて、コートを抱えたがーー。
「あれ? どちらに行かれるんですか?」
ぎくり、と雪乃の肩が強張った。間違いようのない男の声に、向島も振り返り問い掛けるような眼差しを向けてくるものだから、帰ろうとしていたなんて口に出来なくなった。
「あ、いや……お邪魔かな~と思って」
「何でですか?」
ひどく真面目な顔で言われて、雪乃は顔を引き攣らせた。