直感的結婚~恋はこれから~
初キス
「おお、姉ちゃん! 馬子にも衣装だね。きれいじゃん。写真撮るから適当なポーズしてよ」

「適当って、こんな感じ?」

「ウェディングドレスなのに、直立不動でピースとかなんだよ。もっときれいに見えるように手を胸の前で軽く組むとか……そうそう、そんな感じ。で、にこやかに笑って……違う! そんなデカイ口を開けないで、上品に微笑んで。んー、ちょっと表情が固いけど、まあいっか。はい、撮るよ」

「う、うん」


弟の幸哉(ゆきや)に言われるままポーズを取ると何度かシャッター音が聞こえる。それを父と母に送っていた。

急に決まった結婚式に両親は仕事が休めないと欠席。人の都合も考えて日取りを決めろと怒られた。大学生である幸哉だけが、新婦側のたった一人の参列者。

新郎側はお母さんとお姉さん夫婦とその娘が参列する。お父さんはやっぱり仕事で欠席。

急に決まった結婚式で平日だから仕方がないとはいえ、少し寂しい感じもする。お互いの家族への挨拶もまともにしていない。

専務は私の父に電話で話しただけだ。家まで行ければ良かったが、実家は福岡にあって遠い。
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